お金
祖父の家の片付けをしに行くようになって5年くらいたったろうか
お金を払う事が嫌いでひたすら貯めている祖父が
もしもね…
もしもがあって、父がそれを忘れてしまったらね
そういって隠し場所を教えてくれた
唐突に祖父が死ぬという当たり前を意識して
それを予期して先に言ったその行為が
とりとめもなく
胸を締め付けた
軽やかに笑った祖父にあわせて笑おうとしたら
泣きそうになった
スマホに通知が入った
中学生の時の友達が1年ぶりくらいに
今夜会えないか?
淡泊にそれだけ連絡をしてきた
祖父の家から電車に揺られて
実家の最寄りでおりて
友達と
自分の家の
中間点で
待ち合わせ
友達は多額の奨学金を抱えていて
だぶりを重ねた兄と同じく去年に就職
兄は貯金が無くて奨学金がはらえず
お金が貰えるまでに返すと親に20万借りようとし
親はその金が払えず友達に頭を下げて20万を借りた
兄の給料があてだった
でも、兄は仕事をやめてアルバイト
ゲームに数十万課金し、この前さらに借金をしていた
友達は鬱病になっていた
兄にかした20万はかえってこない
親が甘やかしているから、兄は危機感をもたずに新しい場所から次々にお金を借りるのだと
僕はその友達よりお金を使わない
全く
貧乏くさい事しかしない
しかし、お金という後ろ盾はあった事を実感したのだった
こんなにそう思ったのははじめてだった
もっと貧乏な学生なんて今までだって沢山見てきたのに
奨学金なんて2〜3人に1人は借りるのだ
僕はまだ借りずに済んでる
借金せずに大学に通っているのだからそれだけで平均よりは金に余裕があるのだ
こんなに実感したのははじめてだ
こんなに…
でも、僕はやっぱりすれている
兄はいずれ必ず自己破産するのだろうと僕は確信して
だから、その20万は
兄にお金を借りさせてでも返してもらうべきだと考えた
いずれ兄が自己破産し、兄の借金と奨学金を親が払え無かったとしても
兄をそんな風に甘やかせた親の責任だと思って
親にも自己破産してもらうべきだ
学費を一銭も払ってくれなかった親にどんなに頭を下げられても
絶対に金なんて貸すべきじゃない
僕はきっと
奨学金そのものにも怒っていて
少子化だどうだと騒ぐくせに
大学生の2〜3人に1人が借金を抱えた僕らの世代に
結婚した所でさらにお金のかかる子育てが出来る人間が何割いるのだ、とかを考えて
最近、回収が強化され、
利息がついた
名前ばかり奇麗な奨学金の制度が憎らしい
友達の親は高卒で
大学に行きさえすれば金持ちになれると勘違いし
奨学金のリスクを考えもしなかったのだろう
今時、名前さえ書ければ大学生になれるのだ
それだけで金持ちにはなれない
学費の高さも酷いものだが、
奨学金の、妙に明るいビデオを思い出す
なんでそれが返せなくて自己破産するリスクの事を教えないのかと思う
真面目、不真面目ではなく、本当にどうしようもない場合を隠しているのだ
まるで
国ぐるみでやってるサギじゃないかと思う
少子化だ!
なんて
本当に
問題だと思っているとは思えない
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